【分類:対人・コミュニケーション心理】
いきなりですが、同じクラスや職場の人から、
「そういえば○○さん、この前お前ともっと話してみたいって言ってたよ」
と聞いたら、どう思いますか?
本人から直接「もっと話したい」と言われても、嫌な気持ちにはなりませんよね。でも、自分がいないところでそんな話をしていたと聞くと、私はその日から前より意識してしまうかもしれません。
しかも相手が前から気になっている人なら、「へえ、そうなんだ」と平静を装いながら、頭の中では「いつ? どこで? ほかに何か言ってなかった?」くらいまで聞きたくなっているかもしれません。
本人から聞いた言葉と、人づてに聞いた言葉。内容は似ているのに、なぜか後者のほうが本音っぽく聞こえることがあります。
こうした現象は、日本では一般に「ウィンザー効果」と呼ばれています。
ウィンザー効果とは?
ウィンザー効果とは一般に、本人から直接聞く情報より、本人とは別の人から聞いた評価のほうが信用されやすくなることがある、という意味で使われています。
恋愛だけの話ではありません。
たとえば面接で、
「私は責任感があり、何事にも真面目に取り組みます」
と応募者が言ったところで、採用担当者がその場で感動して内定を出すことはまずありません。
もちろん、本当に責任感がある人かもしれません。ただ、面接は自分の長所を伝える場所です。「私、締め切りはたまに忘れますし、面倒な仕事はできれば避けたいです」と正直すぎる自己紹介を始める人なんて見かけませんよね。
では前の職場で一緒だった人から、
「忙しいときでも、任せた仕事は最後までやってくれる人だったよ」
と聞いたらどうでしょう。
「それなら、この人に任せても大丈夫かな」となりますよね。
本人が「責任感があります」と言うのと、実際に働いた人から普段の行動を聞くのでは、こちらが受け取れる情報が違います。
なぜ「誰が言ったか」で信用度が変わるのか
人は話の内容だけを見ているわけではありません。
家電量販店で店員さんから、
「これ、本当におすすめですよ」
と言われたら、「そうなんだ」とは思いつつ、同時に「まあ、売る側だしな」と考える人もいるでしょう。
嘘だと決めつけているわけではありません。その人がそう言う理由も一緒に見ているわけです。
反対に、すでにその商品を半年使っている同僚から「これ結構いいよ。充電だけは遅いけど」と言われたら、私は店員に紹介された時よりも買ってみようかなと思えます。
全部褒めていないところも含めて、「実際に使ってそうだな」と思えるからです。
情報源の信頼性を調べたHovlandとWeissの研究
「誰が言ったか」が受け取り方に関係することは、かなり昔から研究されています。
Carl HovlandとWalter Weissは1951年、同じような情報でも、その情報源を信用できると思っているかどうかで意見の変化に違いが出るのかを調べました。
参加者には複数のテーマについて文章を読んでもらいますが、情報を伝えた人物・媒体の信用度が高く見える条件と、低く見える条件が用意されました。
文章を読んだ直後では、信用度の高い情報源から伝えられた内容のほうが、その主張に沿った意見の変化が大きくなりました。一方、時間がたつと、その差は縮まっていきました。Hovlandらは、時間の経過によって「何を聞いたか」と「誰から聞いたか」の結びつきが弱まる可能性を論じています。
これは「ウィンザー効果」という名前の実験ではありません。
ただ、人は内容だけではなく、発信者まで含めて話を受け取っていることを考えるうえでは、かなり近い研究です。
普段辛口な人から褒められると、急に本当っぽくなる
もう一つ、日常で分かりやすい場面があります。
仲のいい友人が、
「○○は本当にいいやつだよ」
と言ったとします。
参考にはなりますが、親友なら褒めることもあるでしょう。
ところが普段その人に結構厳しい人が、
「いや、あいつ時間にはルーズだけど、人が困ってるときはちゃんと来るよ」
と言った。
私は後者のほうが、「そこは本当にそう思ってるんだろうな」と感じます。
いつも褒めている人の100点より、普段辛口な人の「そこは認めている」のほうが信憑性ありますよね。
実際、Eagly、Wood、Chaikenは1978年、355人の大学生を対象に、「この人ならこういう意見を言いそうだ」という予想と、実際の発言が一致するかどうかが説得にどう関係するのかを調べています。
実験では、話し手やその聞き手がビジネス寄りなのか環境保護寄りなのかといった情報を与えたうえで、全条件で環境保護寄りの主張を聞かせました。
すると、「この立場なら環境保護寄りのことを言うだろう」と予想どおりだった場合より、予想に反する発言をした場合のほうが、話し手は偏りが少ないと評価され、説得力も高くなりました。
「その人なら、そりゃそう言うよね」と思う発言より、「その立場なのに、そこは認めるんだ」と感じる発言のほうが信用されることがあるわけです。
恋愛では「本人が言ったこと」と「友人の予想」が一緒になりやすい
恋愛に戻ります。
共通の知り合いから、
「○○さん、この前あなたと話すの楽しかったって言ってたよ」
と聞いた。
ここまでは、本人が本当にそう話していたなら一つの情報です。
ところがその直後、
「絶対あなたのこと好きだと思うよ」
と言ってきたら?
これはもう、その知り合いの予想でしかありません。
「楽しかったと言っていた」=「付き合いたい」になるのであれば、途中で思考回路が一度ショートしている可能性があります。
恋愛話では、この飛躍が意外と普通に起こります。「何て言ってたの?」と詳しく聞いたら、
「いや、『楽しかった』って言ってただけだけど」
となって、
「全然言ってること違うじゃん(笑)」
となることもあるでしょう。
人づての恋愛話が全部間違っているわけではありません。ただ、本人が実際に言ったことと、伝えた人がそこから想像したことは分けて聞いたほうが話はかなり整理できます。
口コミの第三者の言葉はどこまで影響する?
ウィンザー効果に近い話は、買い物でも見つかります。
店の公式サイトで、
「こだわりの食材を使用しています」
と書かれているのと、実際に行った同僚から、
「あそこ結構うまかったよ。量は少なかったけど」
と聞くのでは、私は後者のほうを店選びの参考にします。
口コミの影響については、Paul Herr、Frank Kardes、John Kimが1991年に実験しています。
研究では、口コミによる情報と商品の特徴についての情報が、商品評価にどう影響するかを調べました。第1実験では、対面で伝えられた口コミは印刷された形式より強い説得力を示しています。
ただし第2実験では、すでにそのブランドへの印象を持っていた場合や、非常に悪い商品情報が示された場合には、口コミの影響が弱くなる、あるいは消える条件もありました。
つまり、「口コミは強いから全部信じる」という話ではありません。
自分が4年間使って満足している家電に、知らない人がレビューで星1を付けたからといって、「なるほど、私は4年間ずっと騙されていたのか」とは普通なりません。
第三者の声も、自分がすでに持っている情報や経験と一緒に判断されています。
悪い噂になると、第三者の言葉が誤解を招くこともある
第三者から聞く情報には、褒め言葉だけでなく悪評もあります。
職場で、
「○○さん、あなたのこと苦手みたいだよ」
と聞かされたら、次に顔を合わせたときに何も気にするなというほうが難しいかもしれません。
ところが元の発言までたどると、
「この前はちょっと話しづらかった」
だった。
それを聞いた人が「苦手なのかな」と自己解釈し、次の人へ「ちょっと苦手みたい」と伝え、さらにその先で「嫌いらしいよ」まで成長する。
最初の本人は、「嫌い」とは一度も言っていません。
こういうときに「人づてに聞いたから本当なんだ」と思ってしまうと厄介です。途中に一人、言葉を強めに受け取る人がいるだけでも、元の話とはかなり変わります。
悪い評判ほど、「それ、本人は実際に何て言ってたの?」まで確認できるとトラブルになりにくいです。
じゃあ、友人に褒めてもらえばモテるのか?
ここまで読むと、
「第三者の評価が信用されやすいなら、共通の友人に自分を褒めてもらえばいいのでは?」
と思うかもしれません。
そういう訳ではありません。
普段の会話の中で、
「昨日、みんな帰ったあと○○だけ片付け手伝ってくれたよ」
と自然に聞くのと、突然、
「○○って優しいし、一途だし、絶対いい彼氏になるよ」
と長所を箇条書きのように出されるのでは、さすがに話が違います。
後者なら私でも、「なんか、くっつけようとしてない?」と、素直に受け取りにくくなる可能性も否定できません。
周囲から自然に良い評判が出ることと、周囲を使って良い評判を作ることは同じではありません。
ウィンザー効果との付き合い方
ウィンザー効果は、「第三者を使えば相手を動かせる心理テクニック」として見るより、自分が情報を信用するとき、内容以外の部分にも影響されていると考えるほうが面白いと思います。
恋愛なら「○○さんがあなたのこと気になってると思う」と聞いたとき、本人が実際に何と言っていたのか聞いてみる。仕事なら「あの人は仕事ができる」と言われたとき、どんな場面を見てそう思ったのか聞く。
口コミでも、「最高でした!」だけより、「何が良かったのか」が書かれているほうが判断しやすいでしょう。
第三者の話は参考になります。ただ、その人の感想なのか、本人が実際に言ったことなのか、目の前で見た行動なのか。そこを分けるだけでも、人づての情報との付き合い方はだいぶ変わります。
まとめ
ウィンザー効果とは一般に、本人から直接聞く情報より、第三者から伝えられた情報のほうが信用されやすくなることがある、という意味で使われています。
ただし、少なくとも今回確認した代表的な研究は「ウィンザー効果」という一つの心理法則を直接証明したものではありません。心理学や消費者研究では、情報源の信頼性、話し手に予想される偏り、口コミによる説得など、それぞれの角度から研究されています。
恋愛でも仕事でも、本人の自己評価より、周囲から自然に聞いた話のほうが本当っぽく感じる場面はあります。
でも、第三者も勘違いしますし、話を盛ることもあります。
「誰から聞いたか」だけでなく、「その人は実際に何を知っていて、どこからがその人の解釈なのか」。
ウィンザー効果を知ったあとなら、そこまで見たほうが人づての話はずっと面白くなります。
Q&A
ウィンザー効果を使えば、好きな人に好かれますか?
そういう訳ではありません。
周囲から自然に良い評判を聞けば、その人への印象に影響することは考えられます。ただ、「友人に褒めてもらう=恋愛感情が生まれる」という研究ではありません。
「○○さんがあなたのこと褒めていたよ」は脈ありですか?
褒めていたこと自体は好意的な情報です。
ただ、「話していて楽しかった」=「付き合いたい」になるのであれば、話が何段階か飛んでいます。
気になるなら、まず「実際には何て言ってたの?」まで聞いたほうが確実です。
口コミを信じるのもウィンザー効果ですか?
一般的な説明とは近い部分がありますが、口コミについては消費者研究として独立した研究も多くあります。
Herrらの1991年の研究では、対面口コミが商品評価へ強く影響する条件が確認された一方、すでにブランドへの印象がある場合などには、その影響が弱くなることも示されています。
ウィンザー効果は正式な心理学用語ですか?
日本では広く使われていますが、今回確認した代表的な関連研究では、「Windsor Effect」という名称そのものより、情報源の信頼性や発信者の偏り、口コミなどが研究されています。
そのため、一つの確立された心理法則として説明するより、関連する研究と分けて扱うほうが正確です。
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参考文献・出典
Hovland, C. I., & Weiss, W. (1951). The Influence of Source Credibility on Communication Effectiveness. Public Opinion Quarterly, 15(4), 635–650.
Eagly, A. H., Wood, W., & Chaiken, S. (1978). Causal Inferences About Communicators and Their Effect on Opinion Change. Journal of Personality and Social Psychology, 36(4), 424–435.
Herr, P. M., Kardes, F. R., & Kim, J. (1991). Effects of Word-of-Mouth and Product-Attribute Information on Persuasion: An Accessibility-Diagnosticity Perspective. Journal of Consumer Research, 17(4), 454–462.