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- 初対面なのに「え、そのアニメも好きなんですか?」と盛り上がって、一気に距離が縮まった
- 合コンやマッチングアプリで「休日の過ごし方」「お金の使い方」が似ている人に安心感を覚えた
- 会社でも、同じゲーム・同じ推しがいる人とは、気づくとよくしゃべっている
この 「なんか気が合う」「波長が合う」 の裏側には、心理学で昔から研究されてきた
「類似性の法則(similarity–attraction)」
という仕組みがあります。
この記事では、恋愛&日常寄りの目線で、
- 「類似性の法則」とは何か
- 恋愛・日常での“あるある”
- 代表的な実験で分かったこと
- なぜ似ている人に惹かれやすいのか
- デメリットと、うまく活かすコツ
を整理していきます。
身近な具体例とエビデンスのポイントでコンパクトに整理します。
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「類似性の法則」とは?(定義)
類似性の法則とは、
人は、自分と似た特徴・価値観・態度を持つ相手に、
親近感や好意を抱きやすくなる心理現象
のことです。
- 出身地・出身校・趣味
- 価値観(お金の使い方・家族観・仕事観)
- 性格や話し方、ノリ
こうした**「共通点」**が見つかると、それだけで
- 「この人、分かってくれそう」
- 「たぶん気が合いそう」
という安心感が生まれやすくなります。
社会心理学では 「類似性–魅力仮説(similarity–attraction hypothesis)」 とも呼ばれ、
「鳥は同じ羽を持つ者同士で群れる(birds of a feather flock together)」ということわざで説明されることもあります。
恋愛研究や「似た者夫婦」を扱う研究でも、**恋人・夫婦は性格や態度・価値観がある程度似ていることが多い(同類婚・アソーティブ・メイティング)**と報告されています。
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恋愛&日常の「類似性の法則」あるある(3本)
1. マッチングアプリで「価値観が近い人」に惹かれる
- プロフィール欄で
- 好きな音楽やアニメ
- 休みの日の過ごし方
- 結婚・子ども・仕事への考え方
が自分と近い人を見ると、
顔写真を見る前から**「この人、なんか良さそう」**と感じがちです。
実際、恋愛の研究では、
- 態度や価値観の類似度が高いカップルほど、関係が安定しやすいという報告が多く、
- 「価値観が合う人がいい」と感じるのは、かなり自然な流れといえます。
2. 職場で「同じ沼にハマってる人」と仲良くなる
- 同じゲームをやっている
- 同じVtuber/アイドル/アーティスト推し
- 同じスポーツチームのファン
と分かった瞬間、
それまでただの「同僚」だった人が、急に**「同志感」**のある存在になります。
日本の解説サイトでも、
出身地や趣味が同じだと、一気に心理的距離が縮まりやすい例として紹介されています。
3. 初対面で「話しやすい人」は、だいたいどこかが似ている
- 話すテンポ
- ボケとツッコミのバランス
- 真面目さ/ゆるさの加減
が自分と近い人とは、
特に共通点を意識していなくても**「話しやすい」「気を遣いすぎない」**と感じます。
恋愛ブログや実務家の解説でも、
「似ている人を好きになる」「似た者同士カップルは長続きしやすい」といった形で、
類似性の法則がよく紹介されています。
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実験で見る「類似性の法則」
1. ニューカムの学生寮研究:「似ているほど仲良くなる」
心理学者ニューカム(Newcomb)は、
大学寮に住む学生を長期的に追いかけ、態度や価値観の類似度と仲の良さの関係を調べました。
結果として、
- 政治・宗教・社会問題などの考え方が似ている学生同士のほうが、
時間が経つにつれ親しくなりやすい
ことが示されました。
「類は友を呼ぶ」は、少なくとも学生寮レベルでは、
かなり現実的なパターンとして観察された、というわけです。
2. バーンの「ボーガス・ストレンジャー実験」
類似性研究の古典として有名なのが、
Donn Byrne による 「ボーガス・ストレンジャー・パラダイム(bogus stranger paradigm)」 です。
ざっくり言うと:
- 参加者に態度・意見のアンケートをさせる
- 「あなたと同じアンケートに答えた別の人がいます」と紹介
- 実際には実験側で 似ている/似ていない回答パターン を作った“ニセの他者”を見せる
- 「この人をどのくらい好きになれそうか?」を評価してもらう
多数の実験で、
- 自分と態度が似ているプロフィールほど好かれやすい
- 類似度が高いほど好意の評価も高まる
という結果が何度も再現されました。
3. メタ分析で分かったこと:「実際の類似」と「似ていると思う感覚」
Montoya & Horton らによるメタ分析では、
313件・460効果量という大規模なデータをまとめて、
- 実際の類似性(態度・価値観などが本当にどのくらい似ているか)
- 「自分たちは似ている」と感じている主観的な類似性
の両方が、対人魅力とかなり強く関連することが示されています。
ざっくり数値で言うと:
- 実際の類似性と魅力の相関:r ≒ .47
- 知覚された類似性と魅力の相関:r ≒ .39
という報告があり、
「本当に似ている」+「似ていると感じる」 の両方が、
人間関係の“くっつきやすさ”に効いていると考えられます。
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なぜ「似ている人」に惹かれやすいのか(原因・仕組み)
1. 「分かってもらえそう」という安心感
類似性の法則の解説では、
共通点が多いほど、「自分を理解してもらえそう」という安心感が生まれる
という説明がよくされます。
- 同じ趣味:会話が途切れにくい
- 似た価値観:意見の衝突が少なそう
- 似た生活リズム:付き合いやすそう
と感じることで、
**「この人となら、関わっても大きく傷つかないだろう」**という感覚が生まれます。
2. 自分の考えを「正当化してくれる存在」だから
自分と似た価値観を持つ相手と一緒にいると、
- 「その考え分かる」「自分もそう思う」と言ってもらえる
- 自分の意見に「いいね」と言ってもらえる
ことで、自分の考えが肯定されているように感じます。
その結果、
「この人と一緒にいると、自分が間違ってない気がする」
「この人の前の自分は、けっこう好きだ」
というポジティブな自己評価が生まれ、
その相手への好意も高まりやすくなります。
3. 共同生活・恋愛を回しやすい現実的メリット
研究レビューを見ると、
恋人や夫婦は、価値観・教育レベル・宗教観・政治的態度などが似ていることが多い(同類婚)と報告されています。
これは単なる偶然ではなく、
- 金銭感覚の近さ
- 家事・育児のスタイル
- 仕事と家庭のバランス感覚
など、長期的に生活を回すうえでのトラブルを減らす現実的メリットがあるから、と考えられています。
4. 「出会いやすさ」とのセット(出会える相手がそもそも似ている)
そもそも、
- 同じ学校・会社・業界
- 同じ地域・コミュニティ
- 同じ趣味・サークル
など、「出会える場所」自体が似た人を集める仕組みになっています。
結果として、
「似た人と仲良くなった」のか
「似た人と出会う場にいたから自然にそうなった」のか
が混ざりやすく、
類似性の法則+出会い方のバイアスがセットで働いていると見るのが自然です。
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類似性の法則のデメリット(恋愛&日常)
1. 「自分に似ていない人」を過小評価しがち
- 趣味が違う
- 働き方・価値観が違う
- 生き方が少し変わっている
というだけで、
「この人とは合わなそう」と早めに切ってしまう
ことがあります。
類似性の法則が強く働くと、
自分と違うタイプの相手から学べることを逃してしまうリスクがあります。
2. SNSや恋愛で「似た者だけの世界」にこもりやすい
アルゴリズムやコミュニティの仕組みも手伝って、
- 自分と似た価値観の人
- 自分と似た政治・思想・趣味
ばかりがタイムラインに集まりやすくなります。
すると、
「自分の考えが世の中の多数派」
「合わない人は“おかしい”人」
という感覚が強まり、
小さな違いも許容できなくなる危険があります。
恋愛でも、
- 「趣味も価値観も100%合う人じゃないと無理」とハードルを上げすぎて出会いが減る
- 少しでも違う部分が見えると「やっぱり合わない」と切ってしまう
といった形で、長期的には自分を苦しめる基準になりがちです。
3. 「似ている=相性が良い」とは限らない
メタ分析を見ると、
「似ているほど必ずうまくいく」とまでは言えず、
- どの領域が似ているか(価値観・趣味・性格のどこか)
- 本当に似ているのか/似ていると思い込んでいるだけなのか
によって、効果はかなり変わることが指摘されています。
例えば、
- 趣味が似ていても、お金・時間の感覚が合わなければ揉めやすい
- 性格が似すぎると、お互いに引っ込み思案/お互いに攻めすぎ…でバランスを崩す
など、「どこが似ているか」の中身が重要です。
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類似性の法則とうまく付き合うコツ
(恋愛&日常編)
1. 「似ているポイント」を会話の“入り口”として使う
恋愛でも日常でも、類似性は**最初の距離を縮める“入り口”**としてかなり優秀です。
- 出身地・出身校
- 好きな作品・音楽・スポーツ
- 休日の過ごし方
など、軽めの共通点から会話を始めるのは、
類似性の法則を素直に活かす使い方です。
ただし、
「共通点が多いから、この人なら絶対うまくいく」
と即決しないことがポイントです。
2. 恋愛では「似ていてほしいところ」を先に決めておく
全部が似ている必要はありません。
- 絶対に譲れない「コア価値観」
- お金の使い方
- 結婚・子どもへの考え
- 嘘・浮気に対するスタンス
- ある程度違ってもいい「周辺部分」
- 趣味
- 好きな食べ物
- 服装のテイスト
というふうに、似ていてほしい領域を自分なりに整理しておくと、
「共通点が多い=全部OK」と勘違いしにくくなります。
3. 日常では「似ていない人」とも一回はちゃんと話す
職場・学校・サークルなどでは、
- 見た目やノリが違う
- 趣味がまったく被らない
人を自動的に“ナシ”にしないルールを自分に課してみるのもアリです。
- 雑談を5分だけしてみる
- 仕事や勉強の話だけでも一度ちゃんとしてみる
といった「一回は向き合ってみる」時間を挟むと、
意外な相性の良さや尊敬ポイントが見つかることがあります。
4. SNSでは「似た世界」と「違う世界」を意識的に混ぜる
アルゴリズムに任せていると、
どんどん似た意見ばかりが流れてきます。
- 敢えて自分と少し違う立場の人もフォローしてみる
- 「共感できないから即ブロック」ではなく、
時々は「なぜそう考えるのか」だけ拾ってみる
といった**小さな“違いの許容量”**を増やしておくと、
類似性の法則に振り回されにくくなります。
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まとめ:「似ている」は“スタートライン”であって、ゴールではない
- 類似性の法則とは、
自分と似た特徴・価値観・態度を持つ相手に、
親近感や好意を抱きやすい心理。 - 学生寮・実験室・カップル研究など、
多くの場面で「似ている人同士が仲良くなりやすい」ことが示されている。 - 背景には、
- 「分かってもらえそう」という安心感
- 自分の考えを正当化してくれる快感
- 共同生活・恋愛を回しやすい現実的メリット
- そもそも似た人と出会いやすい環境
がある。
- 一方で、
- 似ていない人を過小評価しやすい
- 似た者同士だけの世界に閉じこもりやすい
- 「似ている=相性がいい」と決めつけすぎる
というデメリットもある。
だからこそ、
「似ていること」は、仲良くなるきっかけとしてはとても強いけれど、
相性の最終判断基準にしすぎない
というスタンスが大事になってきます。
- 恋愛では「どこが似ていてほしいか」を意識する
- 日常では「似ていない人」とも一度はちゃんと向き合ってみる
この2つを意識するだけで、
類似性の法則を“出会いの味方”にしつつ、
視野を狭めすぎないバランスが取りやすくなります。
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Q&A:類似性の法則についてのよくある質問
Q1. 類似性の法則と「類は友を呼ぶ」は同じ意味ですか?
A. ほぼ同じ方向を指していますが、ニュアンスは少し違います。
- 類似性の法則
→ 「似ている相手を好ましく感じやすい」という、対人魅力の心理現象。 - 類は友を呼ぶ
→ 「似たもの同士が自然に集まる」という、もう少し広い日常表現。
心理学では、
「似ているから仲良くなる」と「仲良くなったから似てくる」の両方があるとされ、
その関係性も議論されています。
Q2. 似ているカップルは本当に長続きしやすいのですか?
A. 研究的には、**「傾向としてはそうなりやすい」**くらいが現実的です。
- カップルや夫婦の研究では、態度や価値観が似ているほど満足度が高いという結果が多い一方で、
- どの領域が似ているか(価値観/趣味/性格)や、
実際の類似 vs 「似ていると思い込んでいるだけ」などによって、効果の大きさは変わります。
「似ていれば必ず長続き」「違えば絶対続かない」とまでは言えません。
Q3. 類似性の法則だけを狙って、相手に合わせるのはアリですか?
A. 短期的にはアリだが、やりすぎると自分がしんどくなります。
- 共通点を探して会話のきっかけにする
- 相手の趣味を少し勉強してみる
といったレベルは、コミュニケーションの工夫として十分アリです。
一方で、
- 本当は興味がないことに、興味があるフリを続ける
- 大事な価値観まで相手に合わせる
ようになると、
長期的には自分のしんどさと「本当の自分は違うのに」というギャップが溜まっていきます。
Q4. 「違うタイプに惹かれる」こともありますが、これは類似性の法則と矛盾しますか?
A. 矛盾というより、「似ている部分」と「補い合える部分」が混在していると考えると自然です。
- 基本の価値観や生き方は似ている
- でも、性格や得意分野は補い合えるように違っている
というカップルや友情はよくあります。
研究的にも、
- 領域によっては「似ている」より「補完的」のほうが良い場合がある
- 類似性の効果は、状況や関係のタイプで変わる
ことが指摘されています。
「どこまで似ていて、どこから違っていてほしいか」を自分で把握しておくと、
このあたりのバランスが取りやすくなります。
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