ピークエンドの法則とは?「一番盛り上がった瞬間」と「終わり方」で思い出が決まる心理【分類:日常の心理/記憶・体験の評価】

  • 一日ほとんど楽しかったのに、最後にちょっと嫌なことがあって「最悪な日だった」と感じてしまう
  • 旅行中はバタバタだったのに、最後の温泉とご飯が最高で「良い旅だったな」と記憶されている
  • 映画の前半は微妙だったのに、ラストが神展開で「名作だった」と評価がひっくり返る

こんなふうに、私たちは

体験の“全部”ではなく、「一番感情が動いた瞬間(ピーク)」と「終わり方(エンド)」で、
その体験をざっくり評価してしまう

クセがあります。

この心理のことを、心理学では**「ピークエンドの法則(peak–end rule)」**と呼びます。ウィキペディア+2Laws of UX+2

この記事では日常寄りの視点で、

  • ピークエンドの法則とは何か
  • 日常でよくあるパターン
  • カーネマンたちの有名な実験
  • なぜ「ピーク」と「終わり」に振り回されるのか
  • 日常でのデメリットと、逆にうまく活かすコツ

を整理していきます。
身近な具体例とエビデンスのポイントでコンパクトに整理します。

目次

ピークエンドの法則とは?(定義)

ピークエンドの法則とは、

ある体験を思い出して評価するとき、
その体験の「一番強く感情が動いた瞬間(ピーク)」と
「終わりのときの感じ方(エンド)」に強く引っ張られ、
それ以外の時間の影響はかなり薄くなってしまう

という心理的なルールです。ウィキペディア+2PMC+2

ポイントはここです。

  • 「体験の平均」ではなく、ピークと終わりで評価してしまう
  • その体験がどれだけ長かったか(時間の長さ)は、ほとんど無視されがち(持続時間の無視:duration neglectウィキペディア+2bear.warrington.ufl.edu+2
  • いい出来事でも嫌な出来事でも、同じような傾向が見られる

この考え方は、カーネマンとフレドリクソンらが提案した
「体験全体ではなく、いくつかの“印象のスナップショット”で思い出を評価する」という
モデル(snapshot model)の一部として位置づけられています。ウィキペディア+2bear.warrington.ufl.edu+2

日常での「ピークエンド」あるある(3本)

1. 旅行・デートが「最後のひと場面」で決まってしまう

  • 旅行中は、
    • 電車の乗り継ぎでバタバタ
    • ホテルもそこそこ
  • でも、最後の夜に入った温泉と、ご飯と、ゆっくりした時間が最高だった

すると、

「なんだかんだ言って、いい旅だったな〜」

と記憶されます。

逆に、ほとんど順調だった旅行でも、

  • 最終日に大喧嘩
  • 空港で大トラブル

などがあると、

「最後のせいで、全部台無しだった」

と感じてしまいがちです。

旅行やデートの「印象」は、
中身の合計よりも「山場」と「ラスト」の影響が大きい
、という典型例です。A3 Life Design+2Nielsen Norman Group+2


2. 一日の仕事・学校が「ラストの一件」で“最悪の日”になる

  • 一日中わりと順調だった
  • 終業間際にミスが見つかってバタバタ
  • 上司から少しきつめに注意されて、そのまま退勤

こうなると、

「今日は散々だったな…」

というラベルがつきます。

冷静に振り返れば、

  • うまくいったこと:7〜8割
  • 微妙だったこと:ラスト1〜2割

くらいでも、最後の1割の印象が、全体評価を上書きしてしまうわけです。Nielsen Norman Group+2PMC+2


3. 映画・ゲーム・ライブを「ラスト10分」で語ってしまう

  • 映画の前半〜中盤はまぁ普通
  • 終盤で一気に盛り上がり、「あのラスト良かった…」となると、
    → 「あれ、意外と名作だったのでは?」となる

逆に、

  • 途中までめちゃくちゃ面白い
  • 最後に「え、その終わり方…?」と肩透かし

だと、

「いや〜、最後がなぁ…」

という感想で、全体評価も下がりやすくなります。Nielsen Norman Group+2Medium+2

実験で見るピークエンドの法則

1. 氷水に手を入れる実験:「より長い痛み」を選んでしまう

カーネマンたちの有名な研究
**「When More Pain Is Preferred to Less(1993)」**では、
ピークエンドの法則がとても分かりやすく示されています。PMC+3JSTOR+3Academia+3

実験のイメージ

参加者は、氷水に手を入れる体験を2パターンやらされます。

  • Aパターン:
    • 14℃の冷たい水に 60秒 手をつける
  • Bパターン:
    • 14℃の水に 60秒 手をつける
    • そのあと、水温を 15℃ に少しだけ上げて、さらに 30秒 つけ続ける
    • 合計 90秒(Aより長くて、トータルの不快さは大きい)

そのあとで、

「どちらのパターンなら、もう一回やってもいいですか?」

と聞きました。

結果

  • 客観的には、A(60秒)<B(90秒)
    → Bのほうが「より長く、より多くの苦痛」を含んでいる
  • それなのに、多くの人が
    「Bパターンのほうをもう一度やる」と選んだのです。JSTOR+2Academia+2

理由はシンプルで、

  • A:ずっと冷たい → 最後も冷たい → 「冷たくて嫌だった」という記憶
  • B:途中までは同じくらい冷たいけど、最後の30秒だけ少しマシになる
    → 「最後のほうはまだマシだった」と記憶される

つまり、

人は体験を思い出すとき、
苦痛の“合計”ではなく、
「一番つらかった瞬間」と「最後の感覚」で評価してしまう

ことが示されたわけです。ウィキペディア+2PMC+2


2. 内視鏡検査の研究:「少し長くても、終わりがマシなら“マシな検査”になる」

大腸内視鏡検査などの、かなり不快な医療処置でも、
ピークエンドの法則が確認されています。SpringerLink+3ウィキペディア+3The Decision Lab+3

  • ある研究では、
    • 一部の患者に、検査の最後を「少し痛みの弱い状態」で数分間延長
    • もう一部の患者には、普通の長さで終了

そのあとで「検査全体がどれくらいつらかったか」を聞くと、

  • 検査時間が長かったグループのほうが、「全体としてマシだった」と評価し、
  • 実際に「また検査を受けに戻ってきやすかった」という結果が出ました。The Decision Lab+2ウィキペディア+2

要するに、

「最後の数分を“少しだけマシ”にするだけで、
体験全体の記憶がよくなる」

という、医療現場ではかなり重要な示唆になっています。


3. 楽しい体験でもピークエンドは働く

「痛み」だけでなく、楽しい体験でもピークエンドの法則は観察されています。ResearchGate+2A3 Life Design+2

  • たとえば、ある楽しい体験の評価は、
    • 一番盛り上がった瞬間(最高に楽しかった場面)
    • 終わり方(終盤の印象)
      に強く引っ張られ、
      楽しさの“合計”や“時間の長さ”はあまり影響しない、という結果が多数報告されています。

なぜピークエンドの法則が起こるのか(原因・仕組み)

1. 記憶は「ダイジェスト版」で保存される

体験のすべての瞬間を、高画質で覚えておくことはできません。

そこで脳は、

「代表的な場面(スナップショット)だけを残して、
あとはざっくり圧縮する」

というダイジェスト保存をします。ウィキペディア+2bear.warrington.ufl.edu+2

その代表的な場面として選ばれやすいのが、

  • 感情が一番大きく動いたピーク
  • その体験が「どう終わったか」というエンド

です。


2. 感情の強い瞬間ほど、ハイライト再生される

感情の大きく動いた瞬間は、
脳の中で**「これは大事な出来事だ」とタグ付け**され、記憶に残りやすくなります。PMC+2PMC+2

  • すごく楽しかった場面
  • すごく怖かった場面
  • すごくイラついた場面

こうした**“極端な瞬間”が、その体験の「顔」として記憶に残る**ため、
全体評価でも大きな影響力を持ってしまいます。


3. 「終わり」が記憶のタイトルを決める

物語でも映画でも、

「どんな結末だったか」

が全体の印象を大きく左右します。

心理学の研究でも、
「体験の終わり方」が、後でその体験をどう語るかに強く影響することが繰り返し示されています。Nielsen Norman Group+2PMC+2

  • 終わりが良ければ、「まぁいろいろあったけど良い思い出」に分類
  • 終わりが悪ければ、「結局あれは微妙だった」に分類

という“タイトル付け”が起こり、そこから逆算して全体の印象も上書きされます。

ピークエンドの法則のデメリット

1. 「体験全体の価値」を見誤りやすい

  • ほとんど良い関係だったのに、最後に一度だけ大喧嘩 → 「あの人とは相性最悪」と記憶
  • だいたい楽しい職場なのに、退職直前のトラブルで「最悪の会社だった」と感じる

こうして、長い期間の“平均的な良さ”が過小評価されてしまうことがあります。ResearchGate+2PMC+2


2. 改善ポイントを間違えやすい

  • サービスやイベントの満足度が低かったとき、
    ピークとエンドだけをいじればいいと乱暴に解釈すると、
    中盤のグダグダが放置されるリスクがあります。The Decision Lab+2Laws of UX+2

また逆に、

  • 全体の流れは悪くないのに、最後の5分だけで評価が決まってしまう
  • そのせいで、「本当の改善ポイント」を見逃す

ということも起こります。


3. 嫌な記憶が「盛られて」残ることがある

  • 一日の中で、本当にひどかったのは5分だけ
  • その5分が感情的ピークかつ「終わり」だった

という場合、その日全体が

「最悪な一日」

として記憶されてしまうことがあります。PMC+1

その積み重ねで、

  • 「仕事=しんどいもの」
  • 「人間関係=疲れるもの」

という全体イメージが、少しずつネガティブに寄っていく可能性もあります。

ピークエンドの法則とうまく付き合う・活かすコツ

1. 「一日の平均点」を意識して振り返る

寝る前などに、

「今日一日を10点満点でつけるとしたら何点?」

と、平均点を意識して振り返る習慣をつけると、
ピークエンドに振り回されにくくなります。

  • 良かった時間・普通だった時間も思い出す
  • 最後の嫌な出来事だけで「0点」にしない

というリハビリを、地味に続けるイメージです。


2. 大事なイベントは「山場」と「終わり方」を設計する

ピークエンドの法則は、あえて利用することもできます。

  • 旅行:
    • 中盤に「一番やりたいこと・行きたい場所」を置く(ピーク)
    • 最後は、ちょっと余裕を持って好きなご飯・温泉などで締める(エンド)
  • デート:
    • どこか一つ「印象的な体験(景色・食事・会話)」を作る
    • 帰り際は、少し落ち着いた時間や一言を用意する

こうして、「山場」と「余韻」を意識的に作ると、
体験全体の記憶もポジティブになりやすくなります。A3 Life Design+2Nielsen Norman Group+2


3. 授業・面談・フィードバックは「最後を少し柔らかく」

教育やフィードバックの研究でも、

「評価やフィードバックの“終わり方”を少し工夫すると、
受け取る側の印象がかなり違う」

という結果が出ています。PMC+2ResearchGate+2

  • 注意点や改善点を伝えたあと、最後に一つ「良かった点」や「期待していること」で締める
  • テストの返却も、最後に短い励ましや次へのヒントを付ける

といった**「少しだけ良い終わり方」**を意識すると、
相手の中の「その体験の記憶」が柔らかくなります。


4. ネガティブな一日は、自分で“エンド”を作り直す

嫌なことがあった日は、

  • 寝る前に好きな音楽を聴く
  • 好きな飲み物を一杯飲んでから寝る
  • 5分だけストレッチをしてから布団に入る

など、小さくても「自分で選んだ良い終わり方」を一つ作るのがおすすめです。

そうすることで、

「最悪なまま終わった日」ではなく、
「途中はしんどかったけど、最後だけちょっとリセットした日」

というラベルに、少しだけ書き換えられます。

まとめ:「山場」と「締め方」が記憶をつくる

  • ピークエンドの法則は、
    体験の評価が「一番強く感情が動いた瞬間」と「終わり方」に大きく左右され、
    体験の長さや“合計の快・不快”はあまり考慮されない、という心理的なルール。ウィキペディア+2PMC+2
  • カーネマンらの氷水の実験や、内視鏡検査の研究では、
    「より長くても、終わりが少しマシな体験」のほうが“マシだった”と評価されることが示された。bear.warrington.ufl.edu+4JSTOR+4Academia+4
  • 日常では、
    • 旅行・デート・仕事の一日
    • 映画・ライブ・ゲーム
      などの評価が、「山場」と「ラスト数分」で決まってしまいがち。A3 Life Design+2Nielsen Norman Group+2
  • デメリットとして、
    • 体験全体の価値を誤解しやすい
    • 真の改善ポイントを見逃す
    • 嫌な記憶が“盛られて”残る

といった点が挙げられる。

一方で、

「山場をどこに置くか」「どう締めるか」

を少し意識するだけで、

  • 旅行やイベントの満足度
  • 授業・面談・フィードバックの印象
  • 一日の終わりの気分

を、無理なくちょっと良い方向に寄せることもできます。

「全部を完璧にしようとするより、
“ピーク”と“エンド”を少しだけ整える」

この発想を持っておくと、
日常の設計や振り返りが、少し扱いやすくなります。

Q&A:ピークエンドの法則についてのよくある質問

Q1. 本当に「ピーク」と「終わり」だけで決まるんですか?

A. 「だけ」とまでは言えません。

研究では、

  • ピークとエンドがかなり強い影響を持つのは確か
  • ただし、それだけですべて説明できるほど「万能ルール」ではない

という結果も出ています。ResearchGate+2PMC+2

あくまで、

「体験をざっくり振り返るとき、ピークと終わりを重く見がち」

くらいに捉えるのがちょうど良いです。


Q2. 嫌な一日の最後を、どうやって“マシな終わり”にできますか?

A. 大事なのは「規模」ではなく**“自分で選んだ終わり方”**を一つ入れることです。

  • 短い散歩
  • 風呂にゆっくり入る
  • 好きな動画を10分だけ見る
  • 日記に「今日それなりに良かったことを3つ」だけ書く

など、小さくてもいいので、

「ここから先は、自分で選んだ締め方」

という区切りを作ると、ピークエンドの“エンド側”を少し書き換えられます。


Q3. 子育て・勉強にピークエンドの法則を活かせますか?

A. かなり応用しやすい分野です。

  • 勉強時間:
    • 途中はしんどくても、最後の5〜10分を「解けた問題・復習の確認・ちょっと褒める時間」にする
  • 親子の会話:
    • 叱ることが多い日でも、寝る前は短くても良いので「今日の良かったところ」を一言伝える

など、勉強や親子時間の「終わり方」を少し工夫するだけで、
子どもの中の「その時間の印象」が柔らかくなりやすいと示唆する研究もあります。PMC+2ResearchGate+2


Q4. 人生全体も、ピークエンドで評価してしまうんでしょうか?

A. はっきり言い切るのは難しいですが、

  • 人は「人生を振り返ってどうだったか」を聞かれたとき、
    • 印象的な出来事(ピーク)
    • 最近の状態(エンド)
      に強く影響されやすい、という研究もあります。ResearchGate+1

だからこそ、

  • 日常の中に「小さなピーク」を時々入れる
  • 一日の終わり・一週間の終わり・一年の終わりを、できる範囲で整える

といった工夫が、地味に効いてくるのかもしれません。

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