「平均以上効果」とは?「自分はまあ平均より上」と思ってしまう心理

  • 「運転?まぁ人並み以上かな」
  • 「仕事の出来?クラスや同期の“真ん中よりは上”でしょ」
  • 「性格?そこそこ優しいほうだと思う」

アンケートをとると、多くの人が**「自分は平均よりちょっと上」**と答えます。
でも、みんなが平均より上なわけは、数学的にはありえません。

この「自分は平均よりちょっと優れている」と思いがちな心のクセを、
心理学では 「平均以上効果(better-than-average effect)」 と呼びます。十文字学園女子大学+2PubMed+2

この記事では、

  • 平均以上効果とは何か
  • 日常の「あるある」例
  • 実験・研究で分かっていること
  • なぜそう感じてしまうのか(原因・仕組み)
  • デメリットと、うまく付き合うコツ

を、日常寄りで整理していきます。
身近な具体例とエビデンスのポイントでコンパクトに整理します。

目次

「平均以上効果」とは?(定義)

平均以上効果とは、

自分の能力・性格・魅力などを、
「平均的な人」よりも高く評価してしまう傾向

のことです。十文字学園女子大学+2PubMed+2

  • 運転のうまさ
  • 勤勉さ
  • 誠実さや優しさ
  • リーダーシップ、コミュ力…

こういった「望ましい特性」について、
「同年代の平均と比べてどのくらい?」と聞くと、
多くの人が“平均より上”に自分を置きがちだと、多数の研究で示されています。PubMed+1

英語では better-than-average effect(BTAE)
「レイク・ウォビゴン効果」と呼ばれることもあります。unprinted.design+1

また、「自分は平均より優れている」と思い込む傾向は、
より広い意味の 「優越の錯覚(superiority illusion)」 の一種とされています。国立研究開発法人科学技術振興機構+2jrias.or.jp+2

日常の「平均以上効果」あるある(3本)

1. 「自分の運転は、まあ安全なほう」

運転に関する代表的な実験では、

でも、統計的には全員が平均より上手い、なんてことは起きません。
それでも

  • 自分は「ながら運転」はしないほうだ
  • 危険な運転をしてるのは“他の人”

と感じがちなのは、平均以上効果の典型例です。


2. 「仕事の能力」「人柄」は平均よりちょっと上だと思ってしまう

職場や大学でも、

  • 「同僚の中で、自分の仕事ぶりはどのくらい?」
  • 「クラスの中で、自分の協調性や誠実さは?」

と聞くと、多くの人が
「真ん中よりやや上」あたりに自分を置きたがることが、メタ分析でも報告されています。PubMed+1

実際の能力分布を見ると、
そこまで“上側にギュッと固まっている”わけではないのに、
心の中の地図だけは「自分はそこそこ優秀」に調整されやすいのです。


3. 「性格の良さ」「モラル」でさえ、みんな平均以上

日本語の記事や研究でも、

  • 正直さ
  • 心の温かさ
  • 道徳性(モラル)

のような「内面の良さ」についてすら、
多くの人が「自分は平均以上」と回答することが示されています。note(ノート)+2国立研究開発法人科学技術振興機構+2

面白いのは、受刑者ですらそうだったという報告があること。

  • 受刑者に、自分の正直さや善良さを
    「一般の人と比べてどうか?」と聞く
  • 多くが「自分は平均より上」と答えた

という結果も紹介されています。note(ノート)+1

「いや、それはさすがに自信ありすぎでは…」と思いつつ、
私たちも程度の差はあれ同じようなバイアスを持っている、と考えられます。

実験・研究で見る平均以上効果

1. ドライバーの「自分は他人よりうまい」問題(Svenson, 1981)

クラシックな研究としてよく挙げられるのが、
スウェーデンの心理学者 Svenson(1981)のドライバー研究です。ResearchGate+2Diva Portal+2

ざっくりいうと:

  1. 多数のドライバーに、
    • 自分の運転技術
    • 自分の安全運転度
      を「平均的なドライバーと比べてどうか?」と評価してもらう
  2. 結果、
    • ほとんどの人が「平均より上」と回答
    • 特に安全運転に関しては、
      7〜8割の人が「自分のほうが安全」と答える、など偏りが顕著

まとめると、

ほぼみんなが「自分は他の人より危険運転しない」と思っていた

という、かなりツッコミどころのある結果になりました。

その後の追試・拡張研究でも、
「自分の運転は平均以上」という 自己評価バイアス が繰り返し確認されています。Diva Portal+2サイエンスダイレクト+2


2. メタ分析で分かった「ほとんどの領域で出るバイアス」(Zell & Alicke, 2020)

2020年のメタ分析(多数の研究をまとめた論文)では、

  • 能力・性格・魅力・健康などさまざまな領域で、
  • 平均以上効果が安定して見られる

ことが改めて整理されています。PubMed+1

このレビューでは、

better-than-average effect は、
自己評価バイアスの「かなり頑固な」一例

とされていて、
多くの文化・サンプルで再現される、けっこうしぶとい癖だと考えられています。


3. 脳レベルの研究:優越の錯覚とドーパミン(山田ら)

日本のグループは、
「自分は平均より優れている」という 優越の錯覚の強さ と、
脳のドーパミン系との関連を調べています。国立研究開発法人科学技術振興機構+2jrias.or.jp+2

概要:

  • 被験者に「自分はどのくらい平均より優れているか」を性格項目で評価させ、
    優越の錯覚の強さを数値化
  • PET・fMRIで脳の
    • 線条体(報酬・動機づけに関わる部分)のドーパミン受容体
    • 前頭葉(特に前部帯状回など)との機能的結合
      を測定
  • 結果として、
    優越の錯覚が強い人ほど、線条体と前頭葉の結合が弱い など、
    特徴的な脳内パターンが見られた、と報告されています。jrias.or.jp+1

また、

  • 過度な優越の錯覚は、無謀な行動につながる可能性があるが
  • 適度なレベルの錯覚は、こころの健康に役立つ

という解釈も紹介されています。国立研究開発法人科学技術振興機構+2jrias.or.jp+2


4. 最近のまとめ:なぜ起きるのか?(Ding, 2024など)

2024年の総説では、

  • 平均以上効果は
    • 認知的な要因(情報の偏り・比較の仕方)
    • 動機づけ要因(自尊心・楽観性)
      の両方から説明できると整理されています。Frontiers+2東北エルゼビア+2

なぜ「自分は平均より上」と思ってしまうのか

(原因・仕組み)

1. 自尊心(自己肯定感)を守りたい

一番分かりやすい理由は、

「自分はそこまで悪くない」と思えたほうが、
気持ちが安定しやすい

からです。

  • 「自分は人として平均以下だ」と本気で思いながら生きるのは、かなりしんどい
  • 多少ポジティブに盛っておいたほうが、
    挑戦する気力も出るし、落ち込んだときのクッションにもなる

日本の研究でも、
優越の錯覚がある程度強い人のほうが、絶望感が低い傾向が報告されています。国立研究開発法人科学技術振興機構+2jrias.or.jp+2


2. 自分の良いところの「情報」のほうが圧倒的に多い

  • 自分の努力した瞬間
  • たまたまうまくいった成功体験
  • 人に褒められた場面

は、全部自分の頭の中にストックされています。

一方、

  • 他人がどれくらい努力しているか
  • どれくらい失敗したあとに成功しているか

は、ほとんど見えません。

その結果、

「自分は結構頑張っている」=「他人より頑張っている」

と、見えている情報の差が、そのまま自己評価の差になりやすいのです。東北エルゼビア+3PubMed+3ResearchGate+3


3. 「平均的な人」があいまいすぎる

アンケートで「平均的な人」を思い浮かべるとき、

  • 実在の具体的な誰か
  • 統計的な“ほんとの平均”

をイメージしているわけではありません。

なんとなく ぼんやりしたイメージの“普通の人” と比べて、
「自分はそれよりは上かな」と判断してしまいます。PubMed+2ResearchGate+2

比較対象がぼやけているほど、
自分に都合よくハードルを下げやすいので、
平均以上効果は出やすくなります。


4. 楽観バイアス・自己高揚バイアスの一部として

脳科学や行動科学では、

  • 将来について楽観的に見積もる「楽観バイアス」
  • 自分を少しよく見たい「自己高揚バイアス」

が、人間にかなり一般的な傾向だとされています。フィナンシャル・タイムズ+2国立研究開発法人科学技術振興機構+2

平均以上効果も、その一部と見ることができます。

  • 「自分は平均より運が良いと思いたい」
  • 「平均より能力があると思っていたほうが、頑張る気になれる」

という 前向きさ・希望の副産物としての側面もあります。

平均以上効果のデメリット

1. リスクを甘く見てしまう(運転・健康・お金)

  • 「自分は運転うまいから事故らない」
  • 「自分は意思が強いから、ギャンブルやスマホ依存にならない」
  • 「自分だけは病気になりにくい」

といった 根拠のない楽観は、

  • 危険な運転
  • 無理な投資
  • 健康管理のサボり

などに繋がりやすくなります。フィナンシャル・タイムズ+3ResearchGate+3サイエンスダイレクト+3


2. 失敗したときに「想定外ダメージ」が大きくなる

「自分は平均以上」と信じているほど、

  • テストで普通の点を取る
  • 仕事で普通にミスする
  • 恋愛で普通に振られる

といった “普通レベル”の出来事で、
必要以上にショックを受けやすくなります。

  • 「自分はもっとできるはずだったのに」
  • 「こんなミス、自分らしくない」

と感じることで、
自己評価の落差が激しくなる危険があります。PubMed+2ResearchGate+2


3. 反省・成長の機会を逃しやすい

  • 「自分は平均より出来るから大丈夫」
  • 「まあ、他の人よりマシでしょ」

と思っていると、

  • フィードバックを軽く流してしまう
  • 自分の弱点を直視しづらい

という問題が出てきます。PubMed+2ResearchGate+2

結果として、

「そこそこ自信はあるけど、なかなか実力が伸びない人」

になりやすくなります。


4. 人間関係で「上から目線」「聞く耳がない」印象を与える

  • 「自分は周りより気が利く」
  • 「自分は人よりちゃんとしている」

という感覚が強いと、

  • 人のミスに厳しい
  • アドバイスを聞きづらい
  • 無意識に上から目線になる

といった人間関係トラブルの火種にもなります。PubMed+2ResearchGate+2

平均以上効果とうまく付き合うコツ(日常版)

1. まずは「名前を知っておく」

  • 「あ、今“平均以上効果モード”に入ってるな」

とラベルを貼れるようになるだけでも、
少し冷静になれます。

  • 運転の自信
  • 仕事の自評価
  • 性格の良さアピール

などで 「自分は平均より上」と思った瞬間に、
一度立ち止まって

「根拠、何かある?」

と自分に聞いてみるだけで、行動が変わることがあります。四條畷学園大学リポジトリ+2uxdaystokyo.com+2


2. 「点数をつける前に、根拠を3つ書く」

自己評価を数値にするシーンでは、

  1. 「自分の○○力は10点中何点?」と考える前に
  2. 「そう思う根拠を3つ箇条書きする」

という順番にしてみます。

  • 「ちゃんとした根拠が出てこない=ただの“気分”かも」
  • 「他人にも当てはまりそうな根拠ばかり=平均以上とは限らない」

と気づきやすくなります。東北エルゼビア+3PubMed+3ResearchGate+3


3. 「自分評価」+「他人からのフィードバック」の二本立てにする

レイク・ウォビゴン効果の記事でも、
平均以上効果を弱めるには“他人からのフィードバックを素直に受け取ること”が大事とされています。uxdaystokyo.com+2unprinted.design+2

具体的には、

  • 仕事:上司や同僚に、1つだけ改善点を聞く
  • 対人:仲の良い人に「もっとこうしてくれたら助かるところある?」と聞いてみる

など、自分では気づきにくい「平均ライン」を外から教えてもらうのがポイントです。


4. 「自分も他人も、だいたい“そこそこ”」くらいにしておく

極端な話、

  • 自分は全部平均以上
  • 他人は全部平均以下

のどちらかに分ける必要はありません。

  • 得意な領域では平均より上
  • 苦手な領域では平均以下
  • まあまあの領域も多い

くらいの グラデーションで見るクセ をつけると、
平均以上効果に振り回されにくくなります。PubMed+2ResearchGate+2


5. 「ちょっと盛った自信」を“行動”に使う

平均以上効果は、

  • 挑戦する勇気
  • 将来への希望

を支えてくれる面もあります。国立研究開発法人科学技術振興機構+2jrias.or.jp+2

なので、

「どうせ自分はダメ」と全部下げるのではなく、
「ちょっと盛った自信」を

  • 勉強を始めるエンジン
  • 新しいことに挑戦するきっかけ

に使ってしまえば、“コスパのいい利用法”になります。

まとめ:「自分は平均以上かも」を、ちょうどよく疑う

  • 平均以上効果(better-than-average effect)は、
    自分の能力・性格・魅力などを「平均の人」より高く見積もってしまう心理傾向。十文字学園女子大学+2PubMed+2
  • 運転・仕事・性格の良さなど、
    さまざまな領域で「自分は平均以上」と答える人が多数を占めることが
    多くの研究・メタ分析で示されている。サイエンスダイレクト+3ResearchGate+3PubMed+3
  • 背景には、
  • デメリットとしては、
  • 一方で、
    適度な「自分も悪くない」という感覚は、
    希望やチャレンジのモチベーションを支える面もあるため、
    「ちょっと盛りすぎてないか?」と時々点検しつつ、
    行動のエンジンとしてうまく使う
    のが現実的な付き合い方になる。国立研究開発法人科学技術振興機構+2jrias.or.jp+2

Q&A:平均以上効果についてのよくある質問

Q1. 平均以上効果と「優越の錯覚」「ダニング=クルーガー効果」は何が違いますか?

A. 関連はありますが、少しずつ違います。

ざっくり言うと、
平均以上効果=“みんな”にある自分アゲ、
ダニング=クルーガー=その中の特定パターン

というイメージです。


Q2. 「自分なんて平均以下…」と思いやすい人にも、平均以上効果はありますか?

A. ありますが、領域ごとに出方が違うと考えられます。

  • 一部の領域(勉強・仕事など)では自分を低く見積もりつつ、
  • 別の領域(優しさ・モラルなど)では、
    「自分は平均よりマシ」と思っているケースも多いと指摘されています。PubMed+2ResearchGate+2

なので、

「全部平均以下だ…」と感じるときほど、
逆に“盛りすぎたセルフダウン”になっていないか

を疑ってみる価値もあります。


Q3. 平均以上効果を完全になくすべきですか?

A. 完全にゼロにする必要はありません。

脳科学の研究では、

現実的な目標としては、

「自分をちょっとだけ良く見るクセ」を完全否定せず、

  • リスク場面では意識して引き算
  • 成長したい場面では、フィードバックを素直に受ける

くらいの 調整力をつけるイメージが近いです。


Q4. 具体的に、日常で“平均以上効果チェック”をするとしたら?

例えばこんなチェックが使えます。

  • 「今、自分を“平均より上”と評価している領域はどこ?」
  • 「その評価の根拠を3つ挙げられる?」
  • 「その根拠は、自分だけでなく他の人にも当てはまりそうじゃない?」
  • 「他人からのフィードバックや数字(点数・成績)と、大きくズレていない?」

これをノートに箇条書きするだけでも、
「盛りすぎセルフ評価」を少し現実寄りに戻す練習になります。PubMed+2ResearchGate+2

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