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- 「好きなんだけど、このまま一緒にいていいのか時々わからなくなる」
- 「別れたいわけじゃないけど、100%ハッピーとも言い切れない」
- 「あの人のこういうところは大好き。でも、こういうところは正直きつい」
恋愛でも友人関係でも、
「好き」と「モヤモヤ」が 同時に 存在している状態
って、意外と多くないでしょうか。
心理学では、こうした
ひとつの相手・関係に対して、プラスとマイナスの気持ちが同時にある状態
を 「アンビバレンス(ambivalence)」 と呼びます。
この記事では、日常&恋愛寄りで
- アンビバレンスの法則とは何か
- 日常・恋愛での「あるある」
- 研究で分かってきたこと
- なぜこんなに心が揺れるのか(原因・仕組み)
- デメリットと、それでも上手く付き合うコツ
を整理します。
身近な具体例とエビデンスのポイントでコンパクトに整理します。
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アンビバレンスの法則とは?(定義)
心理学でいう アンビバレンス は、
同じ人・同じ関係・同じ選択肢に対して、
好き・嫌い/近づきたい・離れたいが同時に存在している状態
を指します。
- パートナーのことは大切
→ でも将来を考えると不安 - 仕事はやりがいがある
→ でもストレスも大きくて続けるか迷う
といった 「行きたいけど怖い」「好きだけどしんどい」 が同居する感じです。
研究では、
- アメリカ心理学会や複数のレビューが
「同じ対象について、矛盾する感情や認知が同時に存在する状態」
といった定義を採用しています。
恋愛に当てはめると、
相手や関係そのものに対して「混ざった感情」を持っている状態
=「アンビバレントな恋愛感情」と言えます。
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日常&恋愛の「アンビバレンス」あるある(3本)
1. 別れたいわけじゃない。でもこのままでいいかと言われると…(恋愛)
- 一緒にいると落ち着く
- 生活も安定している
- でも、結婚・将来の話になると急に重く感じる
頭の中はだいたいこんな感じです:
「嫌いじゃない。むしろ好き。
でも“このままずっと”と言われると、どこかで引っかかる…」
これはまさに、
「アプローチ(近づきたい)」と「アボイダンス(距離を置きたい)」が同時に働いている状態。
「今は別れたくないけど、完全にOKとも言えない」
という恋愛アンビバレンスは、現代の長期カップルでは珍しくありません。
2. 友達のことは好き。でも毎回会うのはちょっと疲れる(日常)
- 話は合うし、長い付き合いの友達
- でも、会ったあとはどっと疲れる
- LINEが来ると「会いたい気持ち50:面倒くささ50」くらいで揺れる
このとき心の中では、
- 「大事な友達だし、断り続けるのも申し訳ない」
- 「でも、今の自分のコンディションを考えると、正直しんどい」
という ポジとネガが同時に存在 しています。
研究でも、
- 人間関係のかなりの割合が「完全ポジティブでも完全ネガティブでもなく、アンビバレント」と報告されていて、
- その揺れがストレスや健康状態にも影響しうるとされています。
3. 「やめたい習慣」をやめられない自分へのアンビバレンス(日常)
- 残業を減らしたいのに、つい仕事を受けてしまう
- SNSをやめたいのに、暇になると触ってしまう
- 「今度こそ運動するぞ」と思いながらソファから動けない
これも広い意味では、
「変わりたい自分」と「変わりたくない自分」のアンビバレンス
です。
やる気ゼロではないけれど、
100%決心できているわけでもない、その宙ぶらりんな感覚が
選択や行動を難しくします。
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実験・研究で見るアンビバレンス
1. アンビバレントな態度は、行動を「決めづらく」する
態度研究では、
- ある対象に対して プラス・マイナス両方の評価を同時に持つ(アンビバレントな態度) と、
- その対象に関する行動や意思決定が、
遅く・不安定になりやすい ことが示されています。
ポイントは:
- アンビバレンスが高いと、
- 態度が揺れやすくなる
- その場の気分・新しい情報に影響されやすくなる
- ただし、
- 「よく考える」傾向も強まるため、
説得力のある情報には柔軟に反応できるという側面もある
- 「よく考える」傾向も強まるため、
というところです。
2. 恋愛アンビバレンスは、幸福感とストレスに影響する
恋愛関係に絞った研究では、
パートナーに対して「好き」と「不満・不安」が同時にある状態
が、心身の健康と関係していることが分かってきています。
- 社会関係におけるアンビバレンスが、血圧や心疾患リスクなどの
身体的健康と関連するという報告があり、 - パートナーへのアンビバレンスを測定するスケールでは、
高いアンビバレンスが、主観的幸福感の低下やストレスの高さと関連していた
という結果も報告されています。
さらに2025年の研究では、
「パートナーが自分に対してアンビバレントだと“感じる”こと」が、
個人と関係のウェルビーイングの低下に結びつくと報告されています。
3. 恋愛の「混ざった感情」は珍しくない
最近のレビューでは、
- 親しい関係のほぼ半分
- 長期の結婚関係の 50〜60%
程度が何らかのアンビバレンスを含んでいる、
という見積もりも紹介されています。
「パートナーのことを100%好きで、
1ミリも不満や迷いがない」
という状態のほうがむしろレアで、
「好きだけど、全部が完璧というわけではない」 が普通、
くらいに考えたほうが現実的です。
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なぜアンビバレンスが起こるのか(原因・仕組み)
1. 一人の人の中に「複数のニーズ」があるから
人間の中には、
- 安心・安定を求める自分
- 変化・刺激を求める自分
- ひとり時間を大事にしたい自分
- 誰かと深くつながりたい自分
といった 複数のニーズ が同居しています。
ひとりのパートナーやひとつの選択が、
これらを 同時に満たしつつ、同時に刺激してしまう とき、
アンビバレンスが生まれやすくなります。
2. 近づきたい気持ちと、傷つきたくない気持ちの綱引き
恋愛アンビバレンスの背景には、
「親密になりたい欲求」と「傷つくのが怖い回避」
の綱引きがあることが多いです。
- 愛着スタイルの研究では、
「感情表現へのアンビバレンス」(言いたいけど怖いなど)が、
親密さへの不安や回避と関係していることが示されています。 - 近づけば近づくほど、
「嫌われたらどうしよう」「依存しすぎるのが怖い」
という感情も同時に強まるため、
好きと不安が一緒に立ち上がってきます。
3. 「白か黒か」で決めづらい複雑な時代だから
現代の恋愛・働き方・生き方は、
- 結婚する/しない
- 子どもを持つ/持たない
- 正社員/フリーランス
など、選択肢が多く、どれも一長一短 です。
葛藤研究では、
一つの選択肢に「プラスとマイナス」が同居したとき、
アプローチ(近づく)とアボイダンス(避ける)が同時に働いて
決断が難しくなることが指摘されています。
「こっちのほうがいい気もするけど、あっちを捨てるのも怖い」
という 複雑さそのものが、アンビバレンスの温床 になっています。
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アンビバレンスのデメリット(日常&恋愛)
1. 決められない・動けない時間が長くなる
- 別れるか続けるか決められない
- 仕事をやめるか続けるか決められない
- 告白するか・しないかで何年も迷う
アンビバレンスが強いと、
「どちらかを選ぶ=どちらかを捨てる」感じが強くなり、
決断・行動が先延ばし になりがちです。
2. 関係の「温度」が安定せず、お互いに疲れる
恋愛研究では、
- パートナーへのアンビバレンスが高いほど、
- 親密さの低下
- 別れを考える頻度の増加
- 不安・ストレスの高さ
と関連することが示されています。
また、
- 自分がアンビバレントなだけでなく、
- 「相手が自分に対してアンビバレントだと感じること」 も、
幸福感や関係満足を下げる要因になると報告されています。
「好きなのかそうでもないのか分からない」
「態度が日によって違う」
という状態が続くと、
どちら側にとってもかなり消耗します。
3. メンタル・体にもじわじわ効いてくる
社会関係のアンビバレンス(親しい相手への混ざった感情)は、
- ストレス感の高さ
- 抑うつ・不安
- 血圧や心臓血管系のリスク
など、心身の健康指標と関連するという報告が増えています。
「ハッキリ悪い関係」よりも、
「良いときもあれば悪いときもある、よくわからない関係」
のほうが、かえって疲れることもある、という指摘です。
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アンビバレンスと上手く付き合うヒント
(日常&恋愛)
1. 「アンビバレントになっている自分」に名前をつける
まずは、
「あ、今“アンビバレンス・モード”なんだな」
とラベルを貼ってしまうのが一番のスタートです。
- 「優柔不断だからダメだ」と責めるより
- 「一つのものに、良さと怖さが両方見えてる状態なんだな」
と 状態として扱うだけで、少し冷静さが戻ります。
2. 「好き/嫌い」を一旦分解して、紙に書き出す
恋愛でも仕事でも、
アンビバレンスで詰まっているときは、
- プラスの要素(好き・続けたい理由)
- マイナスの要素(しんどい・迷っている理由)
を紙に書き出すと、頭の中の「ごちゃ混ぜ感」が少し整理されます。
ポイントは、
- 「相手/状況そのものの問題」と
- 「自分の不安や過去の経験から来ている問題」
を分けてみることです。
3. 「今決めること」と「まだ保留でいいこと」を切り分ける
アンビバレンスのしんどさは、
「全部を一気に決めようとする」
ところから生まれることも多いです。
- 「今月中に別れるか結婚するか決めなきゃ…」ではなく
- 「まず3カ月、一緒にいるときの自分の気持ちを観察してみる」
など、決めるスコープを小さくすると動きやすくなります。
4. パートナーには「揺れていること」を正直に伝える
恋愛アンビバレンスは、
片方だけで抱え込むほどしんどくなりがちです。
最近の研究でも、
アンビバレンスそのものより、「それをどう扱うか」が関係の質に影響する
という指摘が出てきています。
- 「好きじゃないわけじゃないんだけど、将来のことを考えると不安になる」
- 「あなたのこういうところは本当に好き。でも、こういう場面ではしんどくなる」
と、責める口調ではなく「自分の中の揺れ」として共有すると、
一緒に考える余地が生まれます。
5. 「混ざった感情があること=愛が足りない」ではないと知っておく
恋愛記事やドラマに慣れていると、
「本当に愛していれば迷わないはず」
というイメージを持ちがちですが、
研究レベルでは、
- 長期の関係ほどアンビバレンスを含むこと
- アンビバレンスは「関係を深く考えているサイン」でもありうること
が指摘されています。
「揺れがある=ダメ」ではなく、
「揺れの中で何を大事にしたいか」を考える材料
くらいに捉えたほうが、心の負担は軽くなります。
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まとめ:「好き/嫌いの間にあるグレー」をどう扱うか
- アンビバレンスの法則とは、
同じ相手・同じ選択に対して「プラスとマイナスの感情が同時に存在する」心の状態を指す。 - 日常・恋愛では、
- 「別れたいわけじゃないのに、100%続けたいとも言えない」
- 「友達は好きだけど、毎回会うと疲れる」
- 「変わりたいけど、今のままも捨てがたい」
という形でよく現れる。
- 研究からは、
- アンビバレントな態度は、行動や決断を不安定にしやすい
- 恋愛アンビバレンスは、幸福感・ストレス・健康指標と関連する
- それでも、よく考えるきっかけや関係を見直すチャンスにもなりうる
ことが分かってきている。
大切なのは、
「揺れる自分」をダメ出しするのではなく、
「何に対して」「どんなふうに」揺れているのかを
少しずつ言葉にしていくこと。
- 頭の中の「好き/嫌い」を分解して書き出してみる
- 決める範囲を小さくして、一気に白黒つけようとしない
- 信頼できる相手とは「揺れごと共有する」
こうした小さな工夫で、
アンビバレンスは「決断を邪魔する敵」から、
「自分の本音に近づくためのデータ」
に変わっていきます。
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Q&A:アンビバレンスの法則についてのよくある質問
Q1. アンビバレンスって、優柔不断なだけじゃないんですか?
A. かならずしも「性格としての優柔不断」とは限りません。
- 一つの対象に 本当にプラスとマイナスの要素が共存している とき、
しっかり考えているからこそ揺れることもあります。
「何に対して揺れているのか」を具体化すると、
単なる優柔不断と、現実的な悩みの違いが見えやすくなります。
Q2. パートナーへのアンビバレンスがある=別れたほうがいい、ですか?
A. そうとは限りません。
重要なのは、
- そのアンビバレンスが 一時的なものか、慢性的なものか
- 「話し合い」「行動の工夫」で軽くできるものかどうか
です。
研究でも、アンビバレンスがあっても、
それをきっかけに関係を見直して改善したケースも報告されています。
Q3. アンビバレンスがつらすぎるとき、どうすればいいですか?
A. いきなり「結論」を出すのではなく、
- プラス・マイナスを書き出す
- 「今すぐ決める必要があること」と「もう少し保留でいいこと」を分ける
- 信頼できる人・専門家に「揺れている状態そのもの」を話してみる
というステップを踏むのが現実的です。
Q4. アンビバレントな気持ちをパートナーに話したら、傷つけてしまいませんか?
A. 伝え方次第です。
- 「あなたが悪いから迷っている」と伝えると、防衛的になりやすい
- 一方で、
- 「自分の中で、こういう部分で揺れている」
- 「どうしたら一緒に居やすくなるか、一緒に考えたい」
と “自分の気持ち”として共有 すれば、
むしろ関係を深める対話のきっかけにもなりえます。
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