フット・イン・ザ・ドアとは?小さなお願いから本命を通す交渉テクニック

  • 同僚「このアンケート、2〜3問だけ答えてもらっていい?」
  • あなた「それくらいなら全然いいですよ」
  • 数日後、同じ同僚「今度、30分だけインタビューさせてもらえない?」

気づけば、なぜかけっこう大きな協力までOKしてしまっている。

あるいはビジネスで、

  • 営業「まずは無料メルマガだけ登録しませんか?」
  • 数週間後「登録者限定で、オンライン講座(有料)をご案内しています」

最初は軽い一歩のつもりだったのに、
「ここまで付き合ってきたし、このくらいは…」と腰が重くなりづらい場面があります。

このように、

小さなお願いからスタートして、
徐々に本命のお願いに近づけていく説得のやり方

が「フット・イン・ザ・ドア(Foot-in-the-Door)・テクニック」です。ウィキペディア+1

この記事では、日常&ビジネス寄りの視点で、

  • フット・イン・ザ・ドアとは何か
  • 日常や仕事でどんな“あるある”として現れるのか
  • 心理学的にどんな仕組みで人は応じやすくなるのか
  • やりすぎると何が危ないのか
  • どこまでなら“健全に”活かせるのか

を整理していきます。
身近な具体例とエビデンスのポイントでコンパクトに整理します。

目次

「フット・イン・ザ・ドア」とは?

「フット・イン・ザ・ドア」テクニックとは、

最初にごく小さなお願いをしてOKをもらい、
「一度協力した」流れをつくったあとで、
その流れの延長として、より大きな本命のお願いを通す方法

です。ウィキペディア+1

典型的なパターンはこんな感じです。

  1. まずは「ほとんどの人が断らない」レベルの小さな依頼
  2. 相手があまり負担なくOKしてくれる
  3. 時間をおいてから、関連する少し大きめの依頼をする
  4. 相手は「前も協力したし、自分はこういうのに協力するタイプ」と感じ、OKしやすくなる

対になるテクニックが、さっきの記事で扱った
**「ドア・イン・ザ・フェイス」(大きな無茶ぶり→本命を軽く見せる)**ですが、
フット・イン・ザ・ドアはその「逆方向」のやり方と考えると分かりやすいです。ウィキペディア+1

日常&ビジネスでのフット・イン・ザ・ドアあるある

1. 「ちょっとだけアンケート」に答えたら、がっつりヒアリングになった

  • 店頭やオンラインで「所要時間1分の簡単アンケート」に答える
  • 数日後、「とても参考になったので、10〜15分だけ詳しくお話を聞かせてください」とメールが来る

最初の質問は、

  • 負担が軽い
  • 断る理由もあまりない
  • 「協力的な自分」を演出できる

ので、ついOKしやすい。
その後のヒアリング依頼も、**「前も協力したし、ここで断るのも悪いかな」**と感じてしまいやすくなります。

2. 無料メルマガ → 無料セミナー → 有料サービス

マーケティングで非常に多い流れです。

  1. 「メールアドレスだけでOKの無料メルマガ」
  2. 「メルマガ読者限定の無料オンラインセミナー」
  3. 「参加者限定の有料講座/コンサルティングの案内」

いきなり有料サービスを売り込まれると警戒しますが、

  • メルマガ登録
  • 無料セミナー参加

と、小さなYESを積み重ねていくうちに、
「このテーマにコミットしている自分」ができあがっていきます。
CXL+1

3. 社内での「相談」から「いつのまにか案件丸投げ」

  • 先輩「ちょっとこの案件の資料、アドバイスだけもらっていい?」
  • あなた「いいですよ。ここはこうすると分かりやすいかもですね」
  • 数日後、先輩「この案件、やっぱり君にリードで進めてもらえる?」

最初は「軽い相談」レベルなので断りづらく、
コメントしているうちに、自分が一番この案件に詳しい人になってしまう。

その流れで本格的な担当をお願いされると、
「ここまで関わったし、今さら断りづらい…」となりがちです。

実験で見る「フット・イン・ザ・ドア」

1. フリードマン&フレイザー(1966)の有名な実験

フット・イン・ザ・ドアは、
心理学者フリードマンとフレイザーによる1966年の研究で有名になりました。bulidomics.com+1

代表的なパターンは次のようなものです。

安全運転キャンペーンの看板実験

  • ある家庭に対して、まず
    「『安全運転をしましょう』と書かれた小さなステッカーを
    窓に貼ってもらえませんか?」と頼む
    → 多くの人がOK
  • 数日後、同じ家庭に対して
    「庭に“大きくて目立つ”『安全運転』の看板を立ててもらえませんか?」
    とお願いする

結果:

  • 最初に小さなステッカーの依頼を受けたグループのほうが、
    いきなり大きな看板だけ頼まれた人たちよりも、
    圧倒的に高い割合でOKしたのです。ウィキペディア+2staceymacnaught.co.uk+2

家の中の「石けんの銘柄調査」→「家中の棚チェック」

同じ論文では、

  1. まず「家で使っている石けんについて、2〜3の質問に答えてください」という小さなお願い
  2. 数日後、「研究のために、家中の洗剤や石けんの銘柄を調べに行ってもいいですか?」というかなり手間のかかるお願い

という組み合わせもテストされています。

  • 小さな質問に応じた人たちは、
    いきなり大きなお願いだけをされた人たちよりも、
    家を開放してくれる割合が有意に高かったことが報告されています。bulidomics.com+1

2. メタ分析で見た全体的な効果

その後の研究をまとめたメタ分析では、

  • フット・イン・ザ・ドアの効果は**「小〜中」くらいの大きさで安定している**
  • 条件や場面によって効き方に差はあるが、
    「小さなお願い→大きなお願い」の型は、全体として有効な説得方法といえる

といった結果が報告されています。SAGE Journals+1

「やれば絶対成功する魔法」ではありませんが、
“やらないよりはやったほうが通りやすい”程度には効く、現実的なテクニックです。

なぜ「フット・イン・ザ・ドア」が効くのか(原因・仕組み)

1. 「一度OKした自分」と一貫したくなる(自己イメージ)

フット・イン・ザ・ドアの代表的な説明は、
**「自己知覚理論」と「一貫性の欲求」**です。ウィキペディア+1

  • 小さなお願いに協力する → 「自分はこのテーマに協力する人だ」と感じる
  • 後から似たようなお願いをされたとき、
    「前に助けたのに、今回は断るのはおかしいかも」と感じる

つまり、

一度“協力的な自分”として行動してしまうと、
そのイメージと一貫した行動を取りたくなる

という心理が働きます。

2. 自分で「理由づけ」をしてしまう

人は、自分の行動を見て、

  • 「なぜ自分はこのお願いを引き受けたのか」

をあとから説明しようとします。

小さなお願いに応じた理由を、
「なんとなく」で済ませずに、

  • 「自分はこの活動に賛成だから」
  • 「この人の役に立ちたいから」

内側の動機として整理してしまうと、
後の大きなお願いにも同じ理由を適用しやすくなります。
PubMed+1

3. 相手との関係性が「協力モード」に入る

最初の小さなお願いに応じることで、

  • 「この人の頼みごとは、基本的に聞いてあげる側」
  • 「私は一度この人に協力した」

という関係性のフレームができあがります。

その後のお願いは、
**「知らない人から突然頼まれた話」ではなく、
「前に協力してあげた人からの続きのお願い」**として処理されるため、
心理的なハードルが下がるのです。ウィキペディア+1

フット・イン・ザ・ドアのデメリット・注意点

1. 「だまされた」と感じさせると、信頼が一気に下がる

  • 小さなお願いのとき、最初から大きな本命を隠している
  • 後からそれが露骨に見えてしまう

こうなると、

「最初のお願いは“釣り”だったのか」

と受け取られ、信頼が急落します。

ビジネスでは、

  • 無料オファーが実質「有料商品の前フリ」でしかない
  • 小さい案件の相談かと思ったら、大きな契約に強引に持っていかれる

といった使い方をすると、
短期的に売れても、長期的な関係を壊しやすいです。CXL+1

2. 小さなお願いの時点で「負担が重い」と感じられると失敗する

フット・イン・ザ・ドアが成立する前提は、

  • 最初のお願いが「本当に小さい」と感じられること
  • 断るコストが低く、「まあいいか」と言えるレベルであること

です。

最初のステップの時点で、

  • すでに手間が大きい
  • 個人情報を取りすぎて怖い
  • 相手のメリットが見えない

などの要素が強いと、そもそも1段目で断られて終わります。PubMed+1

3. 「小さなお願い」が乱発されると、警戒される

  • とりあえず登録させる無料サービス
  • とりあえず答えさせるアンケート
  • とりあえず参加させる無料Zoom

など、「とりあえず」が続くと、

「どうせこの先に売り込みがあるんでしょ?」

と構えられ、
小さなお願いの段階からスルーされるようになります。

日常&ビジネスでの「健全な付き合い方」

1. 自分が使うとき:「相手にもメリットのある小さなお願い」から始める

フット・イン・ザ・ドアを自分が使うなら、

  • まずは「相手にとっても悪くない」小さなお願い
  • 後から出す本命も、相手側にもメリットがある提案にする

というラインを守ると、まだ健全です。

例(ビジネス):

  • 小さなお願い:
    「サービス改善のため、3問だけ満足度アンケートにご協力いただけますか?」
  • 本命:
    「回答者の方には、改善した新機能の先行トライアルをご案内します」

「協力してくれた人に、ちゃんとリターンがある構図」にしておくのがポイントです。CXL+1

2. 仕掛けられた側になるとき:「一度OKしたから」を理由にしない

フット・イン・ザ・ドアを“かけられた側”になったときは、

  • 「前に協力したから」だけを理由にしない
  • そのお願い単体で見て、やる価値があるかどうか判断する

という意識が大事です。

ビジネスなら、

  • 「一旦、社内のタスクと優先度を見てからお返事します」
  • 「今回の内容は、条件次第で検討可能です」

といった形で、
“前回のYESに自分を縛らせない”クッションを入れると、だいぶ楽になります。

3. 「小さいから」とノータイムで引き受けすぎない

日常でも仕事でも、

  • 「これくらいならいいか」で小さなお願いを積み重ねる
  • 気づけば、自分の時間がかなり削られている

というパターンはよくあります。

  • 小さなお願いでも、「今週の自分の余力」と相談してからOKする
  • 連続して頼まれている相手には、「今回は難しい」と伝える練習をする

ことで、自分のリソースを守りつつ、人間関係も保ちやすくなります

まとめ:小さなYESが、大きなYESを呼び込みやすい

  • フット・イン・ザ・ドアは、
    小さなお願いへのYESを足がかりに、
    後から大きな本命のお願いを通しやすくするテクニック。ウィキペディア+1
  • フリードマン&フレイザー(1966)の研究では、
    「小さな協力」→「大きな協力」の流れを作ることで、
    いきなり大きなお願いをするよりも高い確率でOKが得られることが示された。bulidomics.com+1
  • 背景には、
    • 「自分は協力する人だ」という自己イメージと一貫性を保ちたい心理
    • 行動の理由づけ
    • 相手との関係が“協力モード”に入ること
      などがある。PubMed+1
  • メタ分析では、効果は「小〜中程度」で、
    条件がそろえばそれなりに有効な説得方法であることが示されている。SAGE Journals+1
  • 一方で、
    • 本命を隠しすぎると「だまされた」と感じさせる
    • 小さなお願いの時点で負担が重いと逆効果
    • 乱発すると「全部何かの前フリ」に見えて警戒される

といったリスクもある。CXL+1

現実的な付き合い方としては、

  • 使う側 → 「相手にもメリットがある小さなお願い」から始める
  • 受ける側 → 「前にOKしたから」ではなく、その依頼単体で判断する

というスタンスが、日常でもビジネスでもバランスが良いでしょう。

Q&A:フット・イン・ザ・ドアについてのよくある質問

Q1. フット・イン・ザ・ドアは、営業で本当に効果があるんですか?

A. メタ分析などの研究では、
**「小さな依頼→大きな依頼」の型は、全体として“ないよりはあったほうが通りやすい”**という結果が出ています。SAGE Journals+1
ただし、商品や関係性、タイミングによって効果の大きさは違います。
魔法の営業トークではなく、「説得の基本パターンの1つ」くらいの位置づけが現実的です。


Q2. フット・イン・ザ・ドアとドア・イン・ザ・フェイス、どちらが強いんですか?

A. どちらが「絶対に強い」とは言えません。
両方を比較したメタ分析では、状況によって有利・不利が変わることが指摘されています。SAGE Journals+1

ざっくり言うと、

  • フット・イン・ザ・ドア:
    長期的な関係/行動変容(習慣化)などに向きやすい
  • ドア・イン・ザ・フェイス:
    単発の依頼や「一回きりの協力」に向きやすい

と考えると整理しやすいです。


Q3. 日常であまり“人を操りたくない”のですが、それでも役に立つ視点はありますか?

A. あります。
むしろ、

  • 「自分が知らないうちに、フット・イン・ザ・ドアをかけられている」
  • 「小さなYESの積み重ねで、断りづらくなっている」

と気づくための防御知識として役に立ちます。

  • 何かを頼まれたとき、「これ単体で見て受ける価値があるか?」と考える
  • 前回協力したことを、今回の判断材料にしすぎない

というクセがつくと、
無意識のうちに行動をコントロールされにくくなります。


Q4. 自分が部下や後輩に「小さなお願い→大きなお願い」を使うのはアリですか?

A. 使い方次第です。

  • チームの成長のために、少しずつ責任の範囲を広げてもらう
  • 本人のキャリアにとってもプラスになる仕事を、段階的に任せていく

といった形であれば、
フット・イン・ザ・ドアはむしろ「良い意味でのステップアップ設計」になります。

ただし、

  • 本人の意向や負担を無視して、どんどん仕事を積み増す
  • 小さなお願いを口実に、便利な存在として使い倒す

ような使い方は、信頼を削るだけなので避けたほうが無難です。

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